なぜ正常者のレベルにまでにできるのか?
2022年、欧州糖尿病学会では以下の医学雑誌The Lancetに掲載された内容が紹介されました。このグラフをみて、マンジャロが正常者と同じ血糖コントロールレベルにまでできる理由がわかります。
(Lancet Diabetes Endocrinology, 2022,から引用。)
この研究は、食事をした後の血糖値とインスリンの変化を調べたものです。オゼンピックとマンジャロを比べたところ、マンジャロを投与したグループでは、食後の血中インスリン濃度が100pmol/L前後で推移していることがわかりました。そして、これが最も重要なポイントです。なぜなら、100pmol/Lのインスリン濃度は体内で効果を発揮しやすい濃度とされているからです。つまり、末梢でのインスリン抵抗性も低くなり、血糖値が末梢組織に取り込まれやすくなります。血液中から末梢組織にブドウ糖が移動するため、血糖値が下がり、HbA1cも下がりやすいのです。
マンジャロはオゼンピックよりも、このような血糖降下に対して効率的に有効活用できる性質を持っており、そのため正常血糖領域に近いレベルにまで血糖コントロールができるのです。
一方、オゼンピックは投与後も血中インスリン濃度が高いままになってしまいます。この状態が続くと、脂肪が分解しにくくなり、やせにくくなったり、高インスリン血症となりインスリン抵抗性が生じる可能性があります。血液中のインスリン濃度が高いということが良いことばかりではないことが、この論文の実験結果から示されています。
第2に、マンジャロは、過剰なインスリン分泌を抑えるため、減量に成功しやすいことが示唆されています。インスリン濃度が高くなると、脂肪細胞は減りにくく、インスリン抵抗性も悪化してしまいます。しかし、マンジャロは必要な量のインスリンだけを分泌するように作られており、過剰な分泌をさせません。そのため、高インスリン血症にならず、脂肪細胞が減りやすく、痩せやすくなります。
よって、何故、マンジャロでは血糖コントロールを正常レベルまでに到達できるのか、そして、オゼンピックより痩せられるのか、その理由は、この2つの解釈でご理解いただけると思います。
文献:
1)T. Heise, et al. Effects of subcutaneous tirzepatide versus placebo or semaglutide on pancreatic islet function and insulin sensitivity in adults with type 2 diabetes: a multicentre, randomised, double-blind, parallel-arm, phase 1 clinical trial. Lancet Diabetes Endocrinol. 2022 Jun;10(6):418-429.